河川生態系連続講演会「流域生態系を育む河川ネットワーク」第1回講演を聴講して(2)

講演の第2部では、森と川の関係について、また時代による森と川の変遷などについてお話いただきました。

川に棲む生物の中には、その一生の中で、川と森がセットになっている環境が必要なものがいます。例えばカワトンボです。幼虫は川の中の抽水植物(アシなどのように、水の中から空中に突き出て生えている植物)の近辺に生息しています。抽水植物は羽化の場所ともなっています。その後、羽化したカワトンボは川の近くの斜面林をねぐらとし、少し開けた場所で採餌します。成熟するとカワトンボは、川岸の渓畔林(注1)にやってきて、ここをねぐらとしながら交尾し、川で産卵します。カワトンボは生息場所として、川と森がセットになった構造が必要なのです。

ヒガシカワトンボ

  (写真提供:多留聖典)

一方で、森が生物の生息を妨げる例もあります。例えば竹門さんの調査地の1つ、斜面林が伐採されて12年目の場所では、川岸に灌木が生えるようになったものの、台風のたびに土石流が起き、淵が埋まるなどして川が荒れていました。ところが、伐採されていない天然林のある川(こちらの方がどう見ても「いい川」に見えます)と較べ、伐採された方の川では、水生昆虫の多様性が高かったのです。伐採されていない天然林に囲まれた川では、川底に砂がなく、浮き石の比率がとても高く、淵には落ち葉が多く溜まっていました。そのため石の隙間に棲むshredderにとっては生息しやすい川で、実際にshredderは多かったのですが、砂や砂利、泥の間に棲む生物にとっては生息場所がほとんどない川だったのです。また、よく茂った天然林が川の上に覆い被さるため暗くなり、川底の石の上では光不足で微小藻類があまり生えられず、そのためgrazerにとっても棲みづらい川だったのです。伐採地の川では、砂や泥が川底に溜まっていたために、砂地を好む水生昆虫が多く生息していた他、木がかぶらないために川底が明るく、微小藻類が繁茂してgrazerも多く、全体的に多様性が高くなったのでした。

川にいるある生物にとっては、森がよく発達するとかえって生息できなくなる、というこの結果には最初驚きましたが、理由が分かれば納得のいくことばかりです。森があると川が豊かになる、と言われていますけれども、全体として見れば、よく発達した斜面林・水辺林のある場所や、台風で崩れた場所などがパッチ状に存在するのが、最も豊かなのかもしれません。

注1:渓畔林と河畔林  川が土砂を運んで堆積した所に成立する林。最上流で支流が流れ込まない一次谷、支流が1つ流れ込んでいる二次谷、その次の三次谷までに形成されるものを渓畔林と呼び、扇状地で川が蛇行している所に形成されるものを河畔林と呼ぶ。両者を併せて「水辺林」と呼ぶこともある。

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