生物多様性保全の観点から

 現在、人間活動の影響により、地球は大絶滅時代に入ってしまいました。毎年のように、多くの生物が絶滅に追い込まれています。生物はすべて、他種との関係の中でしか生きられません。人もまた同様です。一体何種の生物が絶滅しても人は無事に生きられるものなのか、そんなことは誰にも分かっていないのです。このままではいずれ、私たち人類の生存に関わる事態となるでしょう。種を滅ぼすことは容易ですが、死に絶えた種をよみがえらせることは、誰にもできません。すべての種はかけがえのないものだ、という視点に立って、今、世界は生物多様性の保全に向けて動き出しています。絶滅を食い止めること、野生生物の生息地を守ることの大切さを、私たち一人一人が認識し、行動すべき時代になったのです。

 生物多様性を保全するためには、野生生物の生息場所を保全しなければなりません。湿地は、陸と水との接点であるために、陸と水中を行き来する生物や、淡水と海水を行き来する生物、湿地特有の生物などが多様な生物が集まります。是非とも保全しなければならない、大事な環境なのです。

 湿地にすむ多様な生物たちは、水の流れによって、また生物自身の活動によって、離れた場所の生態系と関わっています。池で生まれたトンボは、カやハエやウンカなどを食べて私たちを助けてくれつつ、生まれ故郷を離れて遠く旅します。干潟で生まれた貝の子どもは、海流に乗って他の干潟へと運ばれます。その間に他の動物プランクトンや魚に食べられて、その魚たちはさらに遠くの海へ旅立つこともあります。水辺で魚やカニやゴカイを食べた鳥たちは、陸上で糞をすることによって、海の栄養分を陸へ運び上げます。中には何千kmも渡る鳥たちもいます。これらの鳥たちによって、たとえば有明海の干潟は遠いシベリアのツンドラとつながっているのです。

 そう、湿地は陸と水をむすびつけ、熱帯から極地までをむすびつけ、人を多様な生物たちとむすびつける場所なのです。

湿地を保全する理由
(写真:鈴木・花田・松本)

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