河川生態系連続講演会「流域生態系を育む河川ネットワーク」第2回講演を聴講して(1)


 第1回目の講演に引き続き、11月7日(月)17時より、河川生態系連続講演会第2回目「川は地球の動脈:陸と川のつながりが多様な生物を育む」が、東京海洋大学楽水会館大ホールで開催されました。講師は山梨大学工学部の岩田智也さんでした。前回同様、私自身の感想も交えつつ、講演内容の一部をご紹介します。講演は大きく3つの部分に分かれ、最初に生態系間のつながりに関する最近の研究の動向について、次に陸と川のつながりについて、最後に岩田さんご自身の研究から陸と川のつながりの具体例についてお話しいただきました。


 河川と陸上、河川と海など、異なった性質の生態系同士が互いに密接な関係を持つことは景観生態学や群集生態学の知見によって、ここ10数年で急速に理解が進んできました。その背景には、観測・実験機器の発達があります。分析技術が大きく向上したため、以前は大まかな概念しかなかった事柄について高い精度で分析できるようになってきました。たとえば、リモートセンシング(注1)や地理情報システム(GIS)(注2)といった手法の導入により、広域スケールでの変化が実際に見て取れるようになったのですが、その精度は木1本の高さが分かるほどのレベルに達しています。また、DNAの塩基配列解析(注3)や安定同位体分析も短時間で、しかもオートマチックでできるようになり、こうした新しい分析手法を複数組み合わせることにより、さらに色々なことが分かるようになりました。
 例えばアマガエルに関する研究では、ある地域に生息するアマガエルのDNA塩基配列を解析し、その情報をGISに入れ込むことにより、アマガエルの遺伝的交流を阻むバリアが地形図上のどこに存在するかを明らかにできたのだそうです。私はこれには全く驚きました! DNA情報とGISをこんな風に組み合わせるというのは、今まで考えたこともありませんでした。きっと、GIS屋さんと生態屋さんと分子生物屋さんの見事な連携があったのでしょう。こういうジャンルを超えた研究スタイルは、今後どんどん広がるかもしれません。


アマガエル

(写真提供:多留聖典)


注1 リモートセンシング
 remort(遠隔操作の)sensing(感知すること)。地表の実物に触れずに、電磁波センサーを搭載した航空機や人工衛星により地球表面の状態を広範囲に観測する方法。土壌・植生・水などはそれぞれ反射・放射する電磁波の波長が異なるため、電磁波を測定することにより地表の状態が分かる。ただし場合によっては、「remort」だけではなく測定した電磁波に対応する実物を調べる必要がある。

注2 地理情報システム(GIS : Geographical Information Systems)
 位置に関する情報(空間情報)を持ったデータを総合的に加工・管理・分析するためのシステム。これにより、地図上にさまざまな情報を重ね合わせて視覚化・分析することが可能になる。そのためにはその場所における詳細な地図が存在することと、地図に重ねて視覚化・分析したいデータを測定しつつ同時に緯度経度を測定することが必要である。その場合、平たい土地ならGPSで緯度経度を簡便に測定できるが、山などの人工衛星から遮られるような場所ではGPSは使えないため、分析したいデータを取りながら緯度経度を測定することは困難な場合もある。

注3 DNAの塩基配列
 生物の遺伝子の本体であるDNAは、2重螺旋になった非常に長い分子である。螺旋の間をつなぐ「塩基」と呼ばれる部分に4つの種類があり、この4種の塩基の並び順(塩基配列)が、遺伝情報、つまり生物の身体を作る設計図の役割を担っている。DNAの塩基配列は生物の種によって異なる。また同種の個体間でも塩基配列には若干の違いがあり、そのため個体差を生じている。特に、生殖による遺伝的交流がない群れ同士では、長い年月の間に塩基配列に差が生じるため、ある生物の群れの間でお互いにどれほど遺伝的交流があるかをDNA塩基配列を解析することで調べることができる。ただし、生物のゲノム(その生物のDNA一揃い)は莫大な塩基配列を持つので、多くの個体で全ゲノムの塩基配列を比較することは困難である。そのため、遺伝的交流について調べるには、それほど長くない特定のDNAの塩基配列を解析するのが一般的な方法である。しかし、その特定の塩基配列だけの解析で遺伝的交流の多少がすべて判明するとは限らないため、1つの領域における塩基配列の比較だけでは結論が出ない場合もある。

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